20,000x の倍率は、デジタルマイクロスコープで本当に有効か?

デジタルマイクロスコープの有効倍率領域

デジタルマイクロスコープの場合、画像観察手段はカメラだけで、接眼レンズはありません。その一方で、実体顕微鏡のように、目視観察を前提とした接眼レンズ付き顕微鏡にもデジタルカメラを装着できるものがあります。両タイプの顕微鏡は、数多くの分野および産業で様々な技術アプリケーション用に使用されています。

光学顕微鏡の性能を評価するには、そのモデルで実現可能な最高倍率を知ることが重要です。デジタルマイクロスコープに関して言えば、ときどき 20,000x などという途方もない倍率を耳にすることがあります。では、デジタルマイクロスコープの有効倍率領域は本当のところどのくらいなのでしょうか?このレポートは、この質問に対する答えを探る上で手がかりとなる簡単なガイドラインを提供することを目的としています。

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倍率の定義

倍率は、画面上の観察対象物のサイズが、実際のサイズの何倍に当たるかを示す尺度として定義されます。横方向の 2D 倍率は次式で与えられます。

倍率 = 画面上の対象物の寸法 / 実際の対象物の寸法

デジタルマイクロスコープの例と、デジタルカメラを装着した接眼レンズ付き実体顕微鏡の例を下図に示します。

デジタルマイクロスコープの倍率に関して、20,000 x レベルの倍率は有効域を超えている、つまり、倍率の上昇に解像度の向上が伴わない空倍率なのではないかという疑問が呈されるケースがよくあります。画像をモニターに表示して観察するデジタルマイクロスコープの場合、有効倍率領域は何を基準に決めればいいのでしょうか?これには 2 つの大きな要因が関係しています。顕微鏡システムの解像度と画像の観察距離です。

顕微鏡システムの解像度

デジタルマイクロスコープと、デジタルカメラを装着した接眼レンズ付き顕微鏡のシステム解像度には、3 つの大きな要因が関係します。

  • 対物レンズ、ズーム、鏡筒およびカメラのレンズの光学分解能
  • 撮像素子画像センサーの解像度
  • モニターの画像表示解像度

デジタルマイクロスコープシステムの解像度の限界は、上記の 3つの解像度の中の一番小さな解像度によって決まります。

有効倍率領域

最初に、観察距離、すなわち観察者の目からモニターに映し出された画像までの距離が常に有効範囲内にあるものと仮定します。観察距離の有効範囲は、平均的なヒトの目が明瞭に焦点を結びうる平均的な最短距離である 25 cm とします。

デジタルマイクロスコープの有効倍率範囲は、以下のように定義できます。

つまり、有効倍率範囲は、顕微鏡システムの解像度の 1/6 と 1/3 の間ということになります。

画像表示用にサイズの異なるモニターを接続したライカ DMS1000 デジタルマイクロスコープ。

最大倍率

最新のカメラの撮像素子は、ピクセルサイズが 10μm 以下のものが少なくなく、最新のモニターではドットピッチが 1 mm を切るようになってきました。試料からカメラの撮像素子までの倍率が例えば 150x と高い場合、顕微鏡システムの解像度は光学分解能限界によって決まります。光学分解能限界は、NA(=開口数)が上限の1.3、光の波長が可視光の最小値の 400 nm の場合で約 5,400 ラインペア/mm となります。少し前に定義した有効範囲内に収まる最大倍率1,800x です。

試料からカメラの撮像素子までの倍率が、例えば 1x 以下と非常に低い場合、NA(=開口数)は非常に小さいのが普通ですが、ピクセルサイズが 2 μm より大きなカメラの撮像素子の解像度限界と、ドットピッチが 0.5 mm より大きなモニターの解像度限界はともに一般に光学分解能よりも小さくなります。したがって、非常に低倍率では、撮像素子または解像度限界が最終的な倍率を左右する要因となるケースが往々にしてあります。

空倍率

倍率値がデジタルマイクロスコープの有効倍率範囲である 1,800xを超えると、空倍率となります。表示される画像は大きくなるものの、解像度が伴うわけでないために、それまで見えなかった試料の細部が見えるようになるわけではありません。20,000x の倍率は1,800x をはるかに超えています。ということは、これは空倍率だということになります。

結論

デジタルマイクロスコープには、そのほかの光学顕微鏡同様、有効倍率範囲に限界が存在します。この限界値、すなわち 1,800x を超える倍率は、空倍率にほかなりません。デジタルマイクロスコープの有効倍率範囲を詳しく理解したいという方は、参考資料として下記に掲げる技術レポートをご一読ください。

参考資料

DeRose, J.A., Doppler, M.: What Does 30,000x Magnification Really Mean? Some Useful Guidelines for Understanding Magnification in Today’s New Digital Microscope Era. Leica Science Lab, February 2015